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18 ◇8年の歳月

Author: 設樂理沙
last update Last Updated: 2025-12-31 00:59:12

 単身赴任して8年の歳月が流れ──

まさか単身赴任が8年もの長きになるとは流石に想像できなかった。

 それこそ、思いの限りやりたいだけ仕事をしつくしたと言えるだろう。

 あんなに仕事やりたい症候群に捉われていた自分も本社に戻れば、

モーレツ社員は返上して、普通の仕事量でやっていこうと思えるように

なっていた。

 この8年、妻の申し出に甘えて家には一度も帰っていない。

 帰りの新幹線の中で少し不安になってきた。

 家が近づくにつれ、嘗てない感情に捉われはじめてもいた。

 8年間も家族の顔を見ないで過ごしてきた……

過ごしてこれた……

俺は、どうなんだろう?

一般的に……

世間的に……

 仕事しか目に入らない、入らなかった自分が、そのモーレツな思いから

解き放たれた途端、気になりだしたのだ。

 これまでの8年間というものが……。

 だが、ここでそんな思いを捉われたとて何になろう。

 今さらだ。

 大丈夫だ、由宇子とは月に2~3度メールでだが近況のやりとりは

していたりのだから、と自分を鼓舞して……

鼓舞しないといけないっていうこと自体おかしいよなって……

頭のどこかで警鐘が鳴っている。

 家に近づくにつれて、離れた時の子らの顔と妻の顔が浮かんでは消えた。

 俺らしくもなく、少し胸がドキドキしてくる。

 そして、家族と一緒に暮らせる喜びと期待が胸に湧いてくる。

 胸がやたらと高鳴っているのがわかる。

 8年間、俺は仕事一筋真面目にモーレツに頑張った。

 収入も倍以上増えるし役職にもつける。

 妻の由宇子に早くこの話を届けたい。

          ◇ ◇ ◇ ◇

 それなのに家に着くと、俺を出迎えてくれるはずの家族は誰もいなかった。

 出てきたのは、知らない人間だった。

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